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[ レトロ ] 血だまりの中で 
追記にて、レトロの読み物です。
残酷な描写も含まれていますので、苦手な方はご注意ください...



意識が戻った時、始めに感じたのは、酷い鉄の匂いだった。



【 血だまりの中で 】



深い闇が周囲を包み込み、意識が戻った時には周囲がよく見えなかった。
夜目は利く方だったが、視覚よりも先に働いたのは嗅覚だった。
酷い鉄の匂いが真っ先に鼻をつき、思わず眉を顰め、手で覆う。
その匂いに慣れてきた頃、耳に入ってくる激しい音に気が付いた。
それが、自分の荒れた呼吸を整えるための深呼吸だと気付くには、少々時間がかかった。

何故 こんなにも自分は息を荒げているのか
何故 こんなにも酷い鉄の匂いが周囲に漂っているのか

その答えは、自分の目が周囲の暗闇に順応した時に理解した


「―っ…!!」


それまで荒れていた息を飲み込んでしまう少年。

夜目が利いてきたその少年の視界に飛び込んできたのは
辺り一面、どす黒い赤色のペンキをぶちまけたかのような惨劇。
周囲が暗い為、それが血液だと理解するには、周囲に同じく散らばっている様々な肉塊が必要だった。
「なっ………」

一体何が起こったのか…

まだ見出せていない漠然としたその問いに、少年の華奢な身体は無意識にガタガタと震え出し、目が見開かれる。

― だが、
周囲に飛び散った無数の血液
その血液の中にいくつも見える肉片や内臓
それが元となって広がっている酷い鉄の匂い…
少年の周囲に広がるその光景から導き出される答えは簡単だった


― 此処で、大勢の人が死んだ


それが、混乱しながらも、現状を少年が何とか導き出した答えだった。

だが、その答えが導き出された後、新たな疑問が浮かんでくる


― 誰が誰を 何の為に殺したのか


その疑問が少年の脳裏を過った時、足元で鉄製の何かが落ちる音が鳴り響く

「っ………こ……これっ……」

自分の足元に落ちたソレを目にした少年は、更に目を見開いた

「何で…僕がこんなものを………?」

少年の足元に落ちたのは、血痕と細かな肉片がこびり付いたナイフだった。
これだけの血で汚れ、刃こぼれを起こしたナイフにびっちりと肉片がついてしまっては、もう使い物にならないだろう。
だが、少年にとってそんなことはどうでもよかった。
この惨劇を起こした張本人が、自分自身だという結論に至ったからだ。
「な……んで、僕っ………」
先程までよりも更に震え出した少年の膝は折れ、その場に力なく崩れ落ちる。
「何で…何で何で何でっ………」


「――ス、ト………」
「―!!」
少年は、微かに耳に入った聞き覚えのあるその声に顔を上げる。


「フロ………スト………」
「…!母さん!!」

少年は、すぐに声の主が誰であるか理解した。
それは、自分をここまで大切に育ててくれた母親。
顔を上げ、必死に目をこらすと、少年の後方―10メートル程離れた場所に倒れている女性が目に入った。
「母さん!!」
少年はすぐさま、その女性の元に駆け寄る。
女性の元に駆け、辿り着いた少年は愕然とする

女性の―少年の母親の腹部は深々と裂け、そこからは臓器が見えるのではないかという程だった

「そんな……母さん…!母さん!!」
少年はボロボロ泣きながら必死に叫ぶ。
「……フロ、…ト……よく、聞い………て」
「駄目だよ母さん!しゃべったら駄目!」
少年は母親が力を振り絞って差し伸べてきた、血で真っ赤に染まり、ぬるりと湿った手を両手で握り締める。
「…貴方は……私のたっ………つな子供………。そして、……本当のか……ぞくにも………こ、ころからっ………愛されっ……てた」
激しい痛みですぐにでも意識を失ってもおかしくない状況下で、女性は必死に少年に語り掛ける。
「…っから………どうか、自分を見放さない………でっ………嫌いに……な、らないっ………で………」
「母さん…母さん……!!」
少年は、自分に必死に語り掛ける母親を目にし、ただ、泣き叫ぶことしか出来なかった。
「………愛っ………してるわ………フロ、ストッ……………」
「―っ……………」
少年がぎっちりと握っていた女性の手が、くたりと落ちる。
そして、女性の全身からも力が抜けたことを、少年は嫌が応にもわかってしまった。
「かあ……さん………?……ねぇ…母さん………?」
少年は、もう理解してはいるけれど、自分の目の前に突き付けられたその真実を、受け入れたくはなかった。
叫ぶ声すら出ないけれど、涙は溢れ出てくる…
ただ茫然と、息絶えた母親の肉塊の傍で泣き崩れていた少年だったが…

「うっひゃーーー…。こりゃすげぇわなー」
「!」

この状況に似つかわしくない、苛立ちさえも覚えるかのような軽々しい口調。
少年は、涙の溢れる瞳で、その声が発せられた方を見る。

「肉塊肉塊肉塊………。うおー内臓までたんまり飛び散ってら。すげーすげー、こえーこえー」
「全く恐怖心が感じられない、その癇に障る声はどうにかならんのか」
「申し訳ございませんねぇ~。生まれてからずーっとこんな感じなもんで」
耳に入ってくるのは2人の少年の声。

― 何故 こんなところにやって来た……?

自分でも吃驚する程、少年の思考は冷静だった。
「でも、これって誰が殺ったんだ?話に聞いてた奴等にはここまで出来る能力者はいなかったと思うけど」
「ここまで大勢の肉の塊を切り刻める程の身体能力……となると………」

「―お前がキリスか?」
「!!」

気が付かなかった…
否、気が付けなかった。

少年が頭上で響く、酷く冷静で淡々とした声に驚いて顔を上げると、そこにはいつの間にか1人の少年が立っていた。
気配を全く感じられず、また、声の主である少年2人とは違った、異質とも言える不思議な雰囲気を持つその少年の問いに、その場に座り込んでいる血まみれの少年は答えることが出来なかった。
「さっすがエース様!目標発見もはっやいですなぁ!」
「―で、どう?その子が目標で間違いない?」
「…銀髪に紅色の瞳………間違いないだろう」
「お前自身も"同じもの"を感じるのか?」
「……そうだな。この少年は俺と"同じ"だ…」
自分を放置し、話を続ける少年達だったが、銀髪の少年自身も、目の前にいる黒―否、暗くてよく見えないが、黒というより濃紺色だと思われる髪の少年から、言葉では表現出来ない"何か"を感じ取っていた。
「…じゃあ、コイツが皆殺ししたって訳か」
「みな……ごろし……?」
銀髪の少年は、無意識に復唱する。
「俺達はとある組織に飼われてる狗っころ。で、キリス種族の純血種が生き残ってると聞いたお偉いさん方が、君を確保してこいって俺等に命令した訳」
「―それで、君は我々と同じような目的で君を捕獲しようとしていた裏組織に見付かってしまった為、急いで俺達も駆けつけた訳だけれど、…君が既にその連中を始末してくれていたみたいだ」
「…キリス………集団………始末………」


― ああ………そうだ………そうだったんだ………

銀髪の少年は やっと思い出した。


目の前にいる少年2人が語った通り、自分は絶滅種とされていた種族の生き残りなのだと、母親に教えられていた。
だから、定住を避け、母親と共に各地を転々とする生活を続けていた。
此処に来て2週間くらいになり、周囲の人達も皆優しく、そんな生活をしている自分や母親に、家族のように接してくれていた。
転々と生活し続けている少年にとっては貴重な、同年代の友人も出来、不自由な暮らしの中でも充実した時間を過ごしていた。

― それなのに…

辺りが暗さを増し、寒さが身に染みる時刻、十数人の男達が突然やってきて、自分を連れて行くと言ってきた。
何度か同じような事があった為、その男達の目的が何であるのかはすぐに理解することが出来た。
母親は当然それを阻止しようとし、仲良くなった住人達も一緒になって抵抗してくれた。
…が、男達は武器を持っていたのだ。
当然、その事態は予測はしていた。だが、あまりに突然で、相手の人数も今までよりも多かったのだ。
武器らしい武器を持たない住人達は次々と殺されていった。
中には、生きたまま少しずつ少しずつ全身に刃物で傷をつけられ、指を切断され、内臓を引き摺り出されるという苦痛、激痛を与えられながら絶命するという、惨い方法で殺される者もいた。
沢山の悲鳴や断末魔が周囲に響く中、最後まで自分を護っていた母親が目の前で刺された後、少年の意識は途切れた。

よくは覚えていない。
覚えてはいないが……
自分の中で膨れ上がった怒りや憎しみが解放されたかのような感覚は、意識を手放す瞬間、全身に走ったような覚えがある……


― それは
母親から教えられてきた、自分の身体に流れる戦闘民族『キリス』の血が
少年の溢れ出た負の感情を更に膨れ上げさせ、それを戦闘能力に変換し、自我を失った少年を"殺戮者"に変えてしまった瞬間だった


「お前はこのまま此処で死ぬか?」
「っておい!それじゃあ俺等の任務が…!」
意識が現実に戻って来る。
濃紺の髪を持つ少年の問い掛けによって。
「……ここで………しぬ……………?」
「此処で死ぬか、それとも俺達の組織に来てモルモットとして生きるか、選ぶのはお前自身だ」
濃紺の髪を持つ少年は、変わらず冷静な声で問うた。
「………は、いや………」
「…ん?」
別の少年が疑問符を浮かべる。
「………独りぼっちは………嫌……」
それまで止まっていた涙が再び溢れ出る。
「俺達の組織に来れば確実にお前の自由は奪われる。モルモットとしての一生か、運が良ければ俺達同様、組織の狗としてのみの生を与えられる。それでも構わないのか?」
「―っ…!」
「うお!」
それまでしゃがみこんでいた銀髪の少年が、濃紺の髪の少年の脚にしがみついてくる。


「……独りにっ………しないで………!」
(※クリックで原寸大)

「……独りにっ………しないで………!」


懇願だった。
濃紺の髪の少年の服の裾に手を伸ばし、力いっぱい握り締め、縋るように見上げてくる銀髪の少年。
「― それがお前の答えなら、俺達についてこい」
そう言うと、濃紺の髪の少年は自分の裾を握る小さな手を払い、踵を返す。
「っ………」
「相変わらずクールでいらっしゃるぜ我らがエース・御堂様は」
後頭部で両手を組み、ハッと笑いながら別の少年が言う。
「とても同い年とは思えんくらいの冷静さだな。お前も少しは見習え」
「うっせーうっせー。…ってぇことで君、行こうぜ?」
「血や汚れは我々の拠点についてから流すことになるが、構わないか?」
「………」
銀髪の少年は、その問い掛けに黙って頷き、ゆっくりとその場に立ち上がる。
「それじゃあ戻りますかね!」
元気の良い少年がそう言葉を発すると、別の少年と銀髪の少年は、前方を進む濃紺の髪の少年―御堂の後を追った。



これが
銀髪の少年 ― フロストと
濃紺の髪の少年 ― 御堂朱羅との出逢いだった



... END ...




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